さて、沖縄での仕事中編!
更新の予定がとっても遅れました。何というか、沖縄での生活は身体に沁みる。
暖かいゆるやかな時間の中、ここでは前に進むだけではだめ、
忘れてはいけないことがたくさんあると立ち止まざるを得ない息苦しさと、羨ましいという気持ち。
これをどうして記録するなんて言っちゃったんだろ、大変だ。
沖縄での仕事については、自分が手伝った学生服の仕立てに絞って書いていこうと思う。
コスモス洋裁店は、宮里/安慶田(あげだ)/越来(ごえく)の公立中学校3校と、
コザ/北中城(きたなかぐすく)/美里(みさと)公立高校3校の制服指定店である。
自分が滞在する間に行う主な業務としては、中学生の最終仕上げとお渡し、高校生の注文受付から仕立てお渡し。
入学式のこの時期に仕立てるのは夏服で、ブレザーや学ランなどの冬服は後期に入る前に注文期間が設けられる。
採寸から入学式までの1ヶ月で中高合わせて300人以上の、上下約500セットもの着数を仕上げるためには入念な準備を怠らない。
高校生のシャツや男子のスラックスは既製品なのに対して、女子のセーラー服とスカートは完全オーダーメイド。
特にセーラー服は1からお店で仕立てるので、衿のテープやくるみボタン、玉縁ポケットなどのサイズ関係なく作れるパーツは事前に作って準備。
肩幅、袖丈、身幅、着丈、衿の長さは1人1人にぴったり合うように、採寸してから仕立てます。
ボタンの位置も人それそれ着丈によってバランスが変わるため、その感覚はベテラン知念さんの成せる業。
スカートの事前準備としては、プリーツ加工をお願いしているところへ前年度から試作の打ち合わせ。
今でこそプリーツは外注するようになったが、おばあちゃんは全部自分でたたんでいたらしい。
自分の着る1着分ならやったことあるけど、それを何百枚って想像を絶する大変さだ。
その他、スカートの脇だけ先に継ぐ、ウエストを調節するアジャスターパーツを作っておく。
ウエストや丈は注文が入ってから一人ひとりのサイズに合わせて縫製しますが、ここからの労力も凄まじく…
例えば宮里中学校のスカートは、ダーツ2本・タック6本でウエストを調整。
ヒップにゆるみを加えて、丈を合わせ、バランスを整える。
両脇の縫い合わせるところはチェックの柄が綺麗に合うように、裁断から頭フル回転なのである。ボクゼッタイヤリタクナイ!
また各学校によってヒダの本数が異なり、採寸後のウエストサイズに合わせてプリーツが均等になるよう計算してたたみ直す。
1mmのズレが美しさに影響を及ぼすため、1本1本にピンを打って固定してからベルトに縫い合わせる。
恐ろしくないすか?この光景
沖縄ならではというと、なんかスカートが長いよ!面白かったのが学校ごとの指定の厳しさ。
それぞれ採寸の仕方に膝の真ん中だとか膝頭の上だとか決まりがあって、既に採寸が始まりお店は大忙しの頃に、
“膝の中心での採寸を膝頭の真ん中から2㎝上がったところ”に変更と学校から電話があったりw
と思ったら他の洋裁店にも指摘されたか先生達が話し合ったのか、1年生だからやはり膝の中心に再び変更w
セーラー服やスカートに限らず全てのアイテムに各学校のサイズ基準があり、指定店はきちんと守る必要がある。
お店で1から仕立てるアイテムには洋裁店のタグが付くのだが、
例えばスカートが短すぎたりすると、どこの制服店が作ったのかタグを見て苦情が入るらしい。
コスモスのタグの可愛さに唸っている場合ではなかったらしい。
そしてやはり制服。すごいなと思うのが、ちゃんと長持ちするように強度や、サイズ補正ができるよう工夫されているところ。
シャツやベスト、男子のスラックスなどの既製品は発注して、それぞれ採寸したサイズに合わせて直しますが、
スラックスの裾上げをやってみて縫い代を聞いたら驚いた。
中学生は13cm、高校生は12㎝も残す!これで身長が伸びても丈伸ばし可能なんだね。
入学式前や始業式前は、お直しもたくさんくる。
成長に合わせたり、家族や友人のお下がりを貰って自分のサイズに直したり。
そんなこんなで入学式の1週間~2日前までにやっと納品!
何百の制服で埋まっていた店内が、がらんと。
他にも次の仕事が待ってはいるんだけど、その店内にいると明日から何したら良いんだろうと思うとみっちゃん達は話す。
しかし!育ち盛りの子どもというのはモンスターである。納品した後でも気は抜けない。
採寸してから入学までの1か月間に驚くほど身長が伸びる子がいたり、
去年なんかはコロナで入学式がなくなり、夏前まで学校も部活動もお休み。それによって数ヶ月の間に太っちゃってウエストが入らない子が多発。
一生懸命手縫いしたホックを取って、ベルトを全部外し、プリーツやダーツを計算し直してたたみ直すetc.
学生服を仕立てるって大変だけど、ドラマチックな仕事だよね。
学生でこんなにしっかりと仕立ててもらった服を着れるなんて、素敵だね。
自分もそうだったのだろうか。